不動産関係

  • 行方不明の賃借人が,駐車場に自転車を放置しているのですが,撤去してもいいですか。
    私は駐車場を貸しているのですが,賃借人が古い自動車を置いたまま,行方不明になってしまいました。賃料の支払いも1年以上滞納していて,連絡も全く取れません。自動車を処分してもいいでしょうか。
    残念ながら,放置されている自動車を無断で処分することはできません。
    自動車の所有権は賃借人にありますので,賃貸人がその自動車を無断で処分すると,器物損壊罪(刑法261条)に該当することになります。また,後日,賃借人から損害賠償を請求される可能性もあります(自力救済の禁止)。
    したがって,自動車を処分するためには,以下のような法的手続(訴訟・強制執行)を経る必要があります。

    1,賃貸借契約の解除

    まず,駐車場の賃貸借契約を解除する必要があります。賃借人が行方不明になってもその賃借人との賃貸借契約は有効に存続しています。
    したがって,駐車場の明け渡しを求めるためには,まず,賃貸借契約を終了させることが必要となります。

    本件によると,賃借人は1年以上も賃料を支払っていないとのことですので,賃料不払を理由として,賃貸借契約を解除することができます。

    賃料不払を理由に解除する場合には、まず、賃借人に滞納額を一定期間内に支払うように催告通知を発送する必要があります。それでも賃料が支払われない場合に、解除の意思表示をすることで賃貸借契約が解除できます。

    この催告通知は,内容証明郵便で送るのが一般的です。ただし,本件のように,賃借人が行方不明の場合は,内容証明郵便で送っても賃借人には届かず,催告の効力は生じません(意思表示は,相手方に届かなければ効力が生じません)。

    そこで,こういった場合には,公示送達による意思表示の到達を利用します。

    この公示送達という制度は,送付先が不明の場合に,送達内容を裁判所の掲示板に2週間以上掲示することによって、相手方が実際にその送達内容を見たかどうかにかかわらず、相手方に到達したものとみなすという制度です。

    したがって,公示送達によれば,相手方が書類を受け取らなくとも送達の効力が生じることになります。

    2,民事訴訟

    催告の効力が生じた後は,賃貸人は,賃借人に対し,土地明渡請求・未払賃料請求訴訟を提起し,裁判所に提出する「訴状」において契約解除の意思表示をすることになります。

    この訴状の送達も,先ほどの「公示送達」の制度を利用することによって,解除の意思表示についても到達の効果が生じることになります。

    なお,行方不明の賃借人が裁判所へ出頭することは考えられませんので,通常は1回の口頭弁論のみで終結し,その後,判決が言い渡されます。

    3,強制執行手続

    判決が出ても,それだけで自動車を勝手に処分することはできません。裁判所の執行官に対して,土地明渡の強制執行の申立てをする必要があります。
    この強制執行の手続きでは,執行官が,自動車を搬出,保管し,保管後においても賃借人が引き取らない場合には,これを売却することになります。ただ,自動車に価値があると認められないような場合には,実務上,廃棄処分することもあります。

    4,まとめ

    以上のような手続きを経て,放置自動車を処分することになります。
    このような方法は時間もお金もかかりますが,手続きさえ経ておけば,賃借人から責任追及されることはありません。
    したがって,ご質問のような場合もきちんと法的手続きをとりましょう。

債権回収

  • 取引先が倒産したとの通知を受け取りましたが,売掛金の回収は無理でしょうか。
    取引先が倒産したとのことですが,破産したことを念頭において解説します。
      一般には,破産手続が開始すると,取引先の財産は裁判所の選任する破産管財人が管理し,あなたの会社の売掛金を含めた取引先のすべての債務に対して,破産管財人が集めた取引先の財産を配分することとなります。実際には,満額の回収を行うことは難しいでしょう。
      また,あなたの会社が売掛金を担保するために,取引先の不動産等の担保提供を受けていたのであれば,担保価値の範囲内での回収は可能となります。
    逆に,あなたの会社が取引先に対して債務を負っている場合には,注意が必要です。取引先に対して債務を負っている場合には,取引先に対して持っている売掛金の金額の範囲内で,相殺をすることが出来ます(相殺は,売掛金については一方的に回収するのと同様の効果が生じますので,取引先に請求出来る状態であることが必要ですが,破産手続が開始した場合には債務者となる取引先は,支払時期が3か月後であるなどといった期限を主張することは出来ません(期限の利益の喪失 民法137条))。 
    なお,相殺の意思表示は,後日の紛争とならないように内容証明郵便を用いて行うことが一般的です。
    相殺は,反対債務(あなたの会社が負っている債務)の範囲内では,売掛金を回収したのと同じ効果が生じますので,相殺により回収を図ることも可能です。
    あなたの会社が相殺しない場合には,取引先の破産管財人は,取引先の破産手続における債権調査期間の経過後又は債権調査期日の終了後,破産債権者(この場合はあなたの会社です)に対し,一月以上の期間を定め,その期間内に相殺をするかどうかを確答するように催告することが出来ます。したがって,上記の期間内に相殺をしていない場合には,破産管財人から催告を受ける可能性があり,催告期間に相殺しない場合には,破産手続内では相殺の効力を主張することが出来なくなってしまいます。
      なお,取引先の倒産が民事再生手続あるいは会社更生手続の場合には,債権届出期間(裁判所が定めます)内に相殺しないと,相殺が出来なくなってしまいますので,破産手続のように破産管財人からの催告を待っているような悠長なことは言っていられません。必ず,相殺の意思表示を行ってください。ただし,相殺を行う場合には,売掛金の回収を強制することとなりますので,売掛金を即時に請求出来ることが必要ですが,通常は取引先の倒産によって売掛金を即時に請求出来る内容になっている契約書が一般的です。基本的な取引契約が存在しない場合で,期限が先の取引の場合には,相殺が出来なくなってしまう場合もありますので,倒産した取引先が期限を主張出来なくなるような基本契約は締結しておいた方がいいでしょう。
      以上のように,相殺は,取引先が倒産した場合には,反対債務(あなたの会社が負っている債務)の範囲内では,債権回収に役立ちますので,取引先と相互に債権債務が生じるような取引がある場合には,与信管理としても役立てることが出来ます。
  • 強制執行って,どんなものがあるのですか
    強制執行とは,債務者が債務の本旨に従った債務の履行をしない場合に,国家機関が強制的にその債権内容の実現をしてくれるものです。
     
    強制執行は,国が強制的に債務の履行をさせるものですので,強制執行が認められるためには,確定判決や強制執行認諾文言付き公正証書等の債務名義が必要となります。
     債務名義とは何かと言うと,一定の私法上の給付義務の存在を証明し,法律によって執行力を付与された公正の文書です。

     強制執行の種類としては,直接強制,代替執行,間接強制があります。

     直接強制とは,債務者の意思にかかわらず,国家機関が債権内容を直接,強制的に実現することを言い,例えば,買主が代金を支払わないとき,裁判所が買主の預金や給与,不動産等を差押え,これを代金債権の満足に充てること等ができます。ただし,この直接強制の方法は,物の引き渡しを目的とする債務(与える債務)についてだけ認められるものです。

     代替執行とは,第三者に債権の内容を実現させて,その費用を国家機関が債務者から取り立てることを言い,例えば,土地を借りて建物を建てている人が,地代を支払わず,土地の賃貸借契約が解除されると,建物を取り壊して更地にして土地を返還する債務を負いますが,借主がそれを行わない場合,借主に費用負担させて,裁判所の授権を受けた者に取り壊させるということが可能です。この代替執行は第三者が代わって債権の目的を達することができるもの(代替的作為)については可能ですが,例えば,有名演奏家に演奏させる等代替できない作為には認められません。

     間接強制とは,債務を履行するまでの間,裁判所が債務者に対して一定の金銭の支払義務を課することによって,債務者を心理的に圧迫して,間接的に債権の実現を図るものです。従来,間接強制は債務者の自由意思を拘束し無理やり債務者に履行させるものだとして,例外的にしか認められていませんでしたが,現在は,金銭債務を除く物の引渡債務や代替執行が可能な債務については,直接強制,代替執行の方法だけではなく間接強制も認められています。

労務問題

  • 社員を解雇する際には,どのような要件が必要ですか。
    1 解雇予告

    使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくともその30日前に、解雇の予告が必要となります(予告解雇)。また、30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法第20条) 。

    但し,
    ①天災事変等のやむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合
    ②労働者の責めに帰すべき事由(社内での横領や傷害、2週間以上の無断欠勤等)
    の場合は、予告解雇や解雇予告手当は不要ですが,①②ともに労働基準監督署長の認定が必要となります。
     
    なお、以下の場合は解雇予告の規定は適用されません(労働基準法第21条)。
    ①日々雇い入れられる者
       (1箇月を超えて引き続き使用される場合を除く)
    ②2箇月以内の期間を定めて使用される者
       (所定の期間を超えて引き続き使用される場合を除く)
    ③季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
       (所定の期間を超えて引き続き使用される場合を除く)
    ④試用期間中の者
       (14日を超えて引き続き使用される場合を除く)

    2 就業規則や労働協約を遵守すること

    解雇を行うには、就業規則や労働協約に規定された解雇事由に該当することが必要です。また、就業規則等に解雇に関する手続き規定がある場合には、その手続きに従わなければなりません。

    3 法律の禁止事項に該当しないこと

    上記手続きを踏んだ場合であっても、解雇が認められるためには、解雇が法律上禁止されたものではないことが必要です。
    以下に該当する場合は、法律上解雇が禁止されています。

    ①業務上の傷病による休業期間及びその後30日間(労働基準法第19条)
    ②産前産後の休業期間及びその後30日間(同条)
    ③国籍、信条等を理由とする解雇(同法第3条)
    ④労働者が労働基準監督署へ申告をしたことを理由とする解雇(同法第104条)
    ⑤労働組合の組合員であること、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇(労働組合法第7条)
    ⑥女性であること、あるいは女性が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇(男女雇用機会均等法第8条)
    ⑦育児休業の申出をしたこと、又は育児休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条)
    ⑧介護休業の申出をしたこと、又は介護休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第16条)
    ⑨子の看護休暇の申出をしたこと、又は子の看護休暇をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第16条の4) 等です。

    4 正当な理由があること

    さらに、以上のような法律で禁止されている条項に該当しない場合も、「当該解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権を濫用したものとして無効」となります(労働契約法16条)。
    この規定は、判例により確立している「解雇権濫用法理」を明らかにしたものですが、具体的に解雇が有効か否かを検討するには難しい判断が含まれています。したがって,まずは弁護士にご相談ください。
  • 雇用保険の適用について
    アルバイトとして働いていますが,この度,勤務先会社の業績悪化・規模縮小により,アルバイトを辞めることになりました。
     しかしながら,次の働き先の当てもなく,どのように生活していけばよいのか不安でいっぱいです。どうにかならないでしょうか。
    雇用保険を受け取れる場合がありますので,ご検討下さい。
      実務上,アルバイトやパートの場合には,事業主が雇用保険の手続きを怠っている場合が散見されます。アルバイトやパートについては雇用保険の対象にならないと思い込んでいる事業者もおり,また同様に,労働者の側も思い違いしていることが思いのほか存在します。アルバイトやパートの形態であっても,労働者であり,労働基準法上の労働者として保護されますし(例えば,解雇予告手当等。),要件を満たせば,雇用保険の支給を受けることも可能です。
     雇用保険関係は,労働者の意思や事業主の未届出にかかわらず,要件を満たせば,法律上当然に成立します。したがって,事業主が雇用保険の手続きをしていなかったので,雇用保険がもらえないと思い違いされている労働者の方もおられますが,事業主が手続きを怠っていても,雇用保険を受け取ることができますので,気を付けましょう。
    アルバイトやパートなど短時間就労者であっても,31日以上の雇用見込みがあり,1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であれば,雇用保険の対象となります(平成22年4月から短時間就労者及び派遣労働者についての適用範囲が6カ月以上の雇用見込みから31日以上の雇用見込みに拡大されました。これにより,新たに255万人が雇用保険の対象になるものと試算されています。)。
    「31日以上の雇用見込み」とは,31日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き,この要件に該当するものと考えられています。
  • 給与の差押えの範囲について
    現在、私は貸金業者からお金を借りていますが、最近延滞が続いており、債権者から給与を差し押さえると言われました。給与は全額差し押さえられてしまうのでしょうか。
    1 いいえ、違います。
    給与は、各支払期の4分の3に相当する金額につき差押えが禁止されています。したがって、債権者は、原則として、4分の1相当しか差し押さえることができません(民事執行法152条)。
      但し、債務者の保護のために設けられた規定ですので、月額給与に関し、33万円を超える部分については全額差押えが可能です。
      4分の3の金額を算出するにあたっては、給与の額面額ではなく、所得税、地方税、社会保険料を控除した手取り額を基準にします。
      例えば、月20万円の手取り額の場合、債権者は5万円しか差し押さえることができず、あなたの手元には15万円が残ります。
      また、月44万円の手取り額の場合、債権者は11万円を差し押さえることができ、あなたの手元には33万円が残ります。
      月50万円の手取り額の場合、債権者は17万円を差し押さえることができ、あなたの手元には33万円が残ります。
      手取りで月44万円以上ある人については、一律、33万円が手元に残ることとなります。
      
    2 以上からすると、あなたの月の手取り額が12万円しかなかった場合でも4分の1が差押え可能となる結果、あなたの手元には9万円しか残らないといった事態も想定されます。
      このような場合には、申立てにより、差押え禁止範囲の拡張が認められる場合があります(同法153条)。

    3 なお、生活費や養育費の支払いを求めて、給与を差し押さえる場合、上記差押禁止の範囲を考えるにあたっては、扶養等を受けるべき者の必要生計費も含まれていること等を考慮して、4分の1しか差押えできないのではなく、例外的に、2分の1を差し押さえることができるとされています。
    以上  
    (H23.2.19記す)
  • 社員を解雇する際には,どのような要件が必要ですか。
    1 解雇予告

    使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくともその30日前に、解雇の予告が必要となります(予告解雇)。また、30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法第20条) 。

    但し,
    ①天災事変等のやむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合
    ②労働者の責めに帰すべき事由(社内での横領や傷害、2週間以上の無断欠勤等)
    の場合は、予告解雇や解雇予告手当は不要ですが,①②ともに労働基準監督署長の認定が必要となります。
     
    なお、以下の場合は解雇予告の規定は適用されません(労働基準法第21条)。
    ①日々雇い入れられる者
       (1箇月を超えて引き続き使用される場合を除く)
    ②2箇月以内の期間を定めて使用される者
       (所定の期間を超えて引き続き使用される場合を除く)
    ③季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者
       (所定の期間を超えて引き続き使用される場合を除く)
    ④試用期間中の者
       (14日を超えて引き続き使用される場合を除く)

    2 就業規則や労働協約を遵守すること

    解雇を行うには、就業規則や労働協約に規定された解雇事由に該当することが必要です。また、就業規則等に解雇に関する手続き規定がある場合には、その手続きに従わなければなりません。

    3 法律の禁止事項に該当しないこと

    上記手続きを踏んだ場合であっても、解雇が認められるためには、解雇が法律上禁止されたものではないことが必要です。
    以下に該当する場合は、法律上解雇が禁止されています。

    ①業務上の傷病による休業期間及びその後30日間(労働基準法第19条)
    ②産前産後の休業期間及びその後30日間(同条)
    ③国籍、信条等を理由とする解雇(同法第3条)
    ④労働者が労働基準監督署へ申告をしたことを理由とする解雇(同法第104条)
    ⑤労働組合の組合員であること、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇(労働組合法第7条)
    ⑥女性であること、あるいは女性が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇(男女雇用機会均等法第8条)
    ⑦育児休業の申出をしたこと、又は育児休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条)
    ⑧介護休業の申出をしたこと、又は介護休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第16条)
    ⑨子の看護休暇の申出をしたこと、又は子の看護休暇をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法第16条の4) 等です。

    4 正当な理由があること

    さらに、以上のような法律で禁止されている条項に該当しない場合も、「当該解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権を濫用したものとして無効」となります(労働契約法16条)。
    この規定は、判例により確立している「解雇権濫用法理」を明らかにしたものですが、具体的に解雇が有効か否かを検討するには難しい判断が含まれています。したがって,まずは弁護士にご相談ください。